片隅のユートピア

野鳥を愛するシングルシニアの雑記帳

日記・コラム

マダニ襲来の春

新緑が美しい季節を迎えた。陽を浴びて輝く新緑の森を歩くのは楽しい。繁殖期を迎えて野鳥を見かける機会もグンと増えた。 気温が上昇すると虫の活動も盛んになる。沖縄にいたとき、ブヨに喰われてひどい目に遭った。それ以上に忌まわしいのはマダニに噛まれ…

無人島に歩いて渡る

指宿には知林ヶ島(ちりんがしま)という美しい響きをもつ島がある。周囲3キロの無人島だ。 3~10月の大潮、中潮の干潮時には砂州の道が出現し、徒歩で渡ることができる。4月上旬の晴れた日、知林ヶ島を歩いて一周した。 知林ヶ島に渡るのは2回目だった。…

「終わりの感覚」を読む

人間の脳は自分に都合よく過去の記憶を再構築する。そんな話をどこかで読んだ覚えがある。忘れずにいたのは、自分にも思い当たるフシがあったからだろう。 たとえば、母と昔話をすると子供時代の記憶と一致しないことがよくあった。人は皆それぞれのフィクシ…

「ノマドランド」を観る

AmazonのPrime Videoで「ノマドランド」を観た。車上生活をしながら仕事を求めて全米を移動する高齢者たちを描いた作品だ。かれらは現代のアメリカを放浪するノマド(遊牧民)にほかならない。 夫を亡くして家を失った60代のファーンもその一人。彼女は最低…

探鳥で遭う獣たち

九州で移住先を探しているとき、北九州市が候補に挙がった。関門海峡を渡ると山口県の下関市だ。Googleマップであちこち見てみると悪くない。条件のよい格安物件があれば山口県でもいいかなと思った。 その選択肢はすぐに立ち消えになった。山口県にはクマが…

ギルドの晩餐会

確定申告を済ますと春が来る。20年以上続いた春を迎える儀式は、今年から取りやめになった。昨年の収入は年金のみで確定申告が不要になったのだ。 去年の春に廃業届を税務署に出していた。四半世紀にわたる翻訳者人生に幕を下ろしたことになる。意外なことに…

動物園で鳥獣を撮る

動物は好きだけど、動物園はあまり好きではなかった。檻に閉じ込められて落ち着きなく歩きまわる動物の姿が不憫だった。きっとストレス溜まりまくりなんだろうなぁと。 緑豊かな動物園は野鳥のフィールドでもある。たとえば、鹿児島市の平川動物公園。園内に…

病院デビュー 2024

沖縄から鹿児島に引っ越して1年が過ぎた。移住後のゴタゴタや緊張が収まると、それまで影を潜めていた体の不調が表面化してきた。 たとえば、うずくような奥歯の痛み。飛蚊症も進行している。光視症の症状が出ることも。大寒を迎えて足指のしもやけも酷くな…

死ねばいくらでも眠れる

今年の冬は暖冬だという。たしかに昼間は暖かい。手間のかかる石油ファンヒーターではなく、エアコンの暖房で済ますことも多くなった。 とはいえ、朝はギンギンに冷える。起床時間の7時はまだ薄暗い。体は金縛りにあったように暖かい布団から出ようとしない…

語りかけてくる風景

野鳥撮影では望遠ズームのパナライカ100-400mmを使っている。歩いて鳥を探しながら撮るのに適したレンズだ。 ワイド端はフルサイズ換算200mmなので鳥以外の用途では使えない。そこで、風景撮影のためにリコーのGRⅡを持ち出すようになった。 メイン機材のOM-1…

そして1年が過ぎた

昨日は特別な日だった。去年の12月22日、沖縄から鹿児島の指宿へ引っ越したのだ。あれから1年。時はビュンと唸りをあげて過ぎ去った。 見知らぬ土地で家を買う。格安物件とはいえ、人生最大の買い物だ。不安がなかったといえば嘘になる。 それでも、ネット…

グルテン&カゼインフリー事始め

老化は鈍化。60代半ばを迎えてそう実感するようになった。五感の衰えもそのひとつ。手足をぶつけたときの痛みも一呼吸遅れてやってくる。血が出なくて良かったと喜んでいたら、あとからじんわり滲んできたりする。血のめぐりが悪いのだろう。 その一方で、鈍…

持たざる者の拠り所

この秋、65歳になった。48歳のときに移住した沖縄で16年暮らし、去年移り住んだ指宿での暮らしも1年が過ぎようとしている。思えば遠くへ来たもんだとしみじみ思う。 誕生日の翌日、指宿市の健康診査を受けた。結果は意外だった。コレステロールやHbA1cの値…

冷や水を浴びる秋

それは釘を打ちつけるような音だった。近所で家を建てている。最初はそう思った。 夜の遅い時間にもその音は聞こえてきた。大工仕事ではないらしい。何の音でどこから聞こえてくるのか皆目わからない。 数日後、音の出所を突き止めた。我が家の給湯器だった…

在りし日に帰る旅

先週から今週にかけて東京の実家で過ごした。空き家になって8カ月。ガスは使えないけれど、電気と水道はまだ生きている。押し入れを開けると布団や枕もそのままだった。 実家の売却が決まり、来月には家の整理が始まる。自分に関係する物を確認するのが上京…

毎日が旅だから

日本語教師としてインドへ行った友人のブログをときどき読んでいる。最近の記事では映画館でインド映画を見たことや、イスラム教徒の街で牛肉料理を食べたことが綴られていた。異文化を楽しんでいる様子が写真と文章でリアルに伝わってきた。 20代前半の頃、…

スカスカの街が好き

先週、兄からメールが届いた。東京の実家を売りに出すという。東京に戻る気がないことを最終的に確認するメールだった。 築50年と古いけれど、実家の状態は悪くなかった。大規模なリフォームを2回施し、今年の1月まで母が住んでいた。 間取りは4DK。一人暮…

南薩ドライバーズハイ

ドライブが趣味。というわけではないけれど、眺めのよい道を走るのは好きだ。野鳥撮影でいろいろな場所を車でまわるのは楽しい。 もともと車はあまり好きではなかった。20代のときに合宿で免許はとったけれど、ずっとペーパードライバーだった。 マイカーを…

出費がとまらない

一戸建てを買えば家賃の支払いから解放される。そう考えて、築50年の中古物件を買って鹿児島に移り住んだ。それから8カ月。家賃分は節約できているはずなのに、毎月の出費に歯止めがかからない。 移転先で新たな生活を始める。いろいろ物入りになることはわ…

嵐が去った翌日は

台風が通過した翌朝、雨戸を開けようとした。が、雨戸錠がロックされたまま動かない。潤滑剤のKURE 5-56を吹き付けてやっと開けることができた。 日差しが目にまぶしい。外に出て車と家の周りをチェックする。ざっと見た感じでは、被害はなさそうだった。や…

カーヌンの向かう先

パソコンを起動するたびに「台風情報」をチェックする。ここ数日の習慣になっていた。2度にわたって沖縄を襲った台風6号(カーヌン)は、8月7日以降どこへ向かうのか。 進路の予想円を見るたびに気分が重くなっていった。北東から北西へジワジワと向きを…

マイハウス マイラブ

7月もあとわずかだ。今月は野鳥を撮りに行ってない。連日の猛暑で外出する気になれなかった。鳥枯れの季節なので、これといった被写体も思い浮かばない。 去年の夏、沖縄ではヤンバルクイナとアジサシを撮っていた。沖縄に鳥枯れの季節はない。その地の利を…

コロナが明けて会う人は

先週、久しぶりに上京した。日本語教師としてインドへ行く友人の壮行会に出るのが目的だった。コロナもだいぶ落ち着いたので、しばらく会っていない友人たちとも再会したい。コロナで断ち切られた人との関係を結び直したいと思った。 ・7/7(金)夕方、新宿区…

蟲がわく家

昨年末に鹿児島へ越してきた。最初は引っ越しの時期を間違えたと思った。築50年の木造家屋はスカスカだった。10年に一度の寒波に見舞われて、寒さで身を縮ませながら隙間風で揺れるカーテンを眺めていた。 春を迎えると暖かくなった。やれやれと思っていたら…

クルマに狂気が宿るとき

その日は朝から厚い雲が垂れ込めていた。野鳥を撮りに出かけたもののパッとしない。あきらめて早めに帰途についた。家では酒を飲まないはずなのに、なぜか梅酒が飲みたくなってコンビニで買う。 家に着き、いつものように玄関前にバックで停めようとした。駐…

南薩の森を歩く

霧島かそれとも南薩か。鹿児島での移住先として最後まで競い合った2つのエリア。一時は霧島に決まりかけたのだが、条件を満たす物件が指宿に現れたことで形勢は逆転、最終的に南薩に落ち着いた。 引っ越したのは冬だった。霧島にしなくて良かったとしみじみ…

運に見放された日

今週、学生時代の友人と10年ぶりに再会した。車で駅へ迎えにいき、地元の名所をあちこち案内した。ここでもiPhoneのカーナビが大活躍。時間が限られるなか、効率よく目的の場所をまわることができた。 問題は夜だった。夕食では酒を飲みたい。が、飲めば運転…

カーナビ・デビューの春

昨年10月に鹿児島へ物件を見に行ったとき、初めてレンタカーを利用した。カーナビも初体験だった。 未知のものはなんでも怖い。最初は使いこなせるか不安だった。実際に使うと操作は簡単。一度使うと手放せなくなった。コレさえあれば知らない土地でもスムー…

ごみ出しと買い出しの日

春を迎えて暖かくなると、引っ越しで断ち切られた沖縄の習慣が息を吹き返した。たとえば、朝食後にシャワーを浴びるようになった。 3月上旬までは夕食後に入浴していた。節約のために3~4日に1回。浴槽に湯張りして首まで浸かっていた。 今は毎朝シャワ…

鍋が吹きこぼれた年

ロシアがウクライナに侵攻し、世界中がインフレに見舞われた2022年。まさに激動の1年だった。一方、自分にとっては鍋が吹きこぼれた年だった。脳内で温めていた想いが時間とともに煮詰まり、具体的な行動となって現れたのだ。 最初の一歩は仕事をやめたこと…