片隅のユートピア

野鳥を愛するシングルシニアの雑記帳

そして1年が過ぎた

昨日は特別な日だった。去年の12月22日、沖縄から鹿児島の指宿へ引っ越したのだ。あれから1年。時はビュンと唸りをあげて過ぎ去った。

見知らぬ土地で家を買う。格安物件とはいえ、人生最大の買い物だ。不安がなかったといえば嘘になる。

それでも、ネットでその物件を見つけたとき、これはマイハウスだと直観した。決め手となったのは、家が小さくて敷地が狭いこと。それでいて軽なら家の前に駐車できる。

一人暮らしに向いたコンパクトな一戸建てを田舎で見つけるのは難しい。空き家バンクを見ると格安の中古物件がいろいろ載っているけれど、無駄に部屋数が多かったり敷地が広かったりする。

さらに2つの好条件が購入に拍車をかけた。ひとつは道路や家庭菜園で周囲の家と隔てられていること。もうひとつはコンビニやドラッグストアまで歩いて行けること。

実際に1年住んでみて直観は正しかったことがわかった。2Kの間取りは一人暮らしにちょうどよい。家が狭いと掃除も楽だ。

一方、築50年の古い家なので快適さや利便性の欠如は否めない。洗面台がないので歯磨きや髭剃りは台所の流しでする。毎日のことなのでもう慣れてしまった。生活面での細かい不満はあるものの、概ね満足して暮らしている。

何よりも自分の家があるという安心感は大きい。やっと手に入れた終の棲家。将来への不安が軽くなった気がした。

新たなホームタウンにも愛着が湧いてきた。指宿の売りは風光明媚なところ。錦江湾と対岸の大隅半島の山々がこの街の景観に奥行きを与えている。

野鳥撮影であちこち回るうちに絶景ポイントをいくつか見つけた。たとえば、山頂まで車で行ける魚見岳。ここから眺める知林ヶ島と背後に広がる大隅半島の山並みはすばらしい。

魚見岳から眺める知林ヶ島

ほかにも開聞岳山麓や池田湖の周辺など、眺めのよいスポットはたくさんある。世界各地の植物が楽しめる「フラワーパークかごしま」もお気に入りスポットのひとつだ。最初に年間パスポート(1050円)を買えば好きなだけ利用できる。

フラワーパークかごしまの展望回廊からの眺め

移住後しばらくの間は、道路に並ぶヤシの木やハイビスカス、ブーゲンビリアといった熱帯系の花々を見ては沖縄を思い出していた。寒波も襲来し、暖かい沖縄が恋しかった。

1年が過ぎた今、思い出の詰まった16年間の沖縄暮らしは意識の片隅に追いやられようとしている。去る者日々に疎し。わかっちゃいるけど少し哀しい。