片隅のユートピア

野鳥を愛するシングルシニアの雑記帳

ヤッちゃんに会いにいく

鹿児島で2回目の春を迎えた。春になるとヤツガシラが渡ってくる。珍鳥ハンターではないけれど、自分が住む南薩エリアが舞台なので無関心ではいられない。

南さつま市笠沙町はヤツガシラの飛来地として有名だ。西端にある野間半島は眺めがよく、昨年春の訪問以来、お気に入りのスポットになっていた。

3月下旬、ヤツガシラとの出会いを求めて野間半島へ向かう。半島の付け根に車を停めて、先端の灯台まで歩いて往復する。

眼下に広がる海を眺めながら、緑に覆われた半島を歩くのは心地よかった。路傍の草むらから飛び立つヤツガシラを目撃した。出会いはそれ1回だけ。結局、ヤツガシラは撮れなかった。

道路脇のスペースに停められている車を何台も見かけた。超望遠レンズを首から下げた、ヤツガシラを撮りに来たと覚しき人々の姿も。

珍鳥のヤツガシラを撮ろうと皆が狙っている。どことなくピリピリした雰囲気。ここは居心地のよい場所ではなくなった。探鳥を終えてそんな印象を抱いた。

今年はヤツガシラの当たり年らしい。人気スポットは外してその周辺に目を向けることにした。

Googleマップでヤツガシラが飛んできそうな場所を探す。該当するのは海から近い草地や芝生のスペースだ。候補地を5カ所ほどピックアップし、順番にまわることにした。

当日の予報は曇り。現地で候補地をまわっていると雨が降りだした。沖縄でヤンバルクイナを撮るときは雨が有利に働いた。エサのミミズが出てくるからだ。同じ理屈がヤツガシラにも通用すると嬉しいんだけど。 

4番目の候補地に着くと雨はやんでいた。アカハラが芝生でエサを探している。その近くにお目当ての珍鳥がいた。ヤツガシラですが、何か? と言わんばかりの何食わぬ顔つきで。

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ヤンバルクイナと同様にヤツガシラも車内から撮影した。このやり方だと俯角が深くなり、背景がきれいにボケてくれない。

ドアをそっと開けて外にでる。車の脇からローポジションで撮ろうとした。が、すぐに飛ばれてしまった。

ヤツガシラが飛び去った方向に5番目の候補地があった。一抹の期待を込めて最終候補地へ車を走らせる。ヤッちゃん、いま会いに行きますと呟きながら。

最後のフィールドでもアカハラの群れが目に飛び込んできた。それを見てよい知らせだと思った。空き地の奥に目を凝らす。ヤツガシラは芝生の端に佇んでいた。

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作戦が功を奏して2カ所でヤツガシラを撮ることができた。満足度の高い1日だった。その一方で、撮影の課題も浮き彫りになった。

地面にいる鳥はローポジション撮影で背景をぼかしたい。しかし、ヤツガシラは警戒心が強いため、車内からの撮影に頼らざるを得ないのだ。

もっとも、警戒心には個体差がある。飛来数が多ければユルい個体も混じっているハズ。そう信じて、結局また飛ばれるんだろうな、きっと。