片隅のユートピア

野鳥を愛するシングルシニアの雑記帳

渡りの秋はロマンの季節

秋は渡りの季節。珍鳥ハンターではないけれど、見知らぬ鳥との予期しない出会いは楽しい。

沖縄に住んでいたとき、地元の林道で迷鳥のミヤマヒタキと出会った。誰もいない山の中で自分だけの宝石を見つけた気分だった。

鹿児島も渡り鳥の話題には事欠かない。薩摩半島の西側は渡りのルートらしい。ネット上にも珍鳥の目撃情報が多く寄せられている。

当然、その西側ルートを目指したくなるのだが、薩摩半島を端から端へ横断することになり、1時間半を超えるドライブを強いられる。できれば地元でなんとかしたい。

地元の探鳥フィールドではバーダーをほとんど見かけない。仮に珍鳥が渡ってきていても、バーダーの目に触れなければ目撃情報として出回らない。

西側ほどではないにしろ、薩摩半島の東側でも珍しい渡り鳥と会えるのではないか。そんな予感がした。青天の霹靂だったミヤマヒタキとの出会いのように。

地元のマイフィールドで珍鳥を発見すれば喜びも大きい。誰もいない山の中で自分だけの宝石を探すことにした。

その日訪れたのは初めての場所だった。落ち葉が積もった緩やかな道を歩いていく。行く手をさえぎるクモの巣を払いながら、丘の頂上付近まで登りつめる。

前方の地面から鳥が飛び立ち、近くの木にとまった。見知らぬ鳥だった。実物を目にするのは初めてだが、野鳥図鑑で見た記憶がある。イワミセキレイだ。

心臓の鼓動がいっきに速くなった。カメラを構えて連写する。前に枝があってAFがなかなか合わない。AFの設定を変えている間に姿を消してしまった。

さらに進むと丘の頂上だった。すぐに引き返してイワミセキレイを探す。最初にいた地面にいるのを見つけた。近づくとすぐに飛び立ち、道の先へと飛んでいく。キセキレイの行動パターンだ。

じりじり近づくと飛ばれ、また近づくと飛ばれる。そんなことを繰り返しながらライファーの姿をカメラに収めていく。

曲がり角の先で鳥は姿を消していた。あっけない幕切れだった。翌日はもういなかった。イワミセキレイは抜けるのが早いらしい。

時間は短くても胸を躍らせる体験だった。新たに開拓したマイフィールドでレアな渡り鳥と出会う。探鳥はロマンだと改めて思った。