秋の沖縄は鷹の渡りの季節だ。無数の鷹が翼を広げて上空を旋回しているシーンを見たことがある。その雄大な光景に息を呑んだ。
それでも、撮れた写真は空抜けの腹打ちばかり。海や山を背景に水平か見下ろすアングルで鷹を撮りたい。そう思って候補地を訪ねてみたが、撮影の機会は得られなかった。腹打ちショットをいくら撮っても代わり映えしないので、渡りの鷹への関心は薄れていった。
渡りの鷹とは別に気になる猛禽類がいた。沖縄で野鳥撮影を始めて間もない頃、川岸の高い木に1羽の鷹がとまっているのに気がついた。頭から腹にかけて白い。大きく威厳のある姿。自宅に帰って調べるとミサゴだった(英語名はOsprey)。
それ以来、海や河口、ダム湖でミサゴを見かけるたびに撮影を試みた。腹打ちの写真なら簡単に撮れたけれど、それは撮りたいミサゴの写真ではなかった。
撮りたかったのは獲物の魚を鷲掴みにして水面から飛び立つシーンだ。その一瞬にミサゴの魅力が凝縮されている気がした。
ミサゴが魚を狩るシーンを撮影するためにプロジェクトを立ち上げた。題して「オスプレイを撃て」。上空をブンブン飛び回るうるさい米軍機への反発も込めたネーミングだった。
ミサゴを目撃した場所や出現が期待できそうな場所をピックアップして集中的に通う。すべて空振りに終わった。
そのうちヤンバルクイナの撮影に魅せられて、このプロジェクトは立ち消えになった。
沖縄から鹿児島へ引っ越すと、ミサゴ撮影のプロジェクトは思わぬ復活を遂げた。海に飛び込んだミサゴが魚を捕らえて浮上する――頭に描いていた光景が目の前で展開されていたのだ。
ミサゴの撮影にはキーポイントが2つあった。ひとつは風向き。海にダイブしたミサゴは浮力を得るために風に向かって飛び立つ。ミサゴが陸に向かって飛ぶ風向きの日を選ぶ必要があった。
もうひとつは潮の満ち引き。その場所では干潮時にミサゴが狩りをしていた。上空から獲物を見つけやすいのだろう。
ミサゴが飛び立つ風向き、そして干潮の時間帯。好条件でミサゴのダイブを狙える日は少ない。その待ち望んだ日がやってきた。
OM SYSTEM OM-1 + LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm
カツオドリではイマイチだったOM-1の鳥認識AFだが、ミサゴの撮影ではかなり使えることがわかった。変顔のカツオドリと違ってミサゴは風格のある猛禽類の顔立ち。AF精度の差はそこから生まれているのかも。
それでも、海面に浮上して水しぶきが上がるシーンはピンボケだった。鳥認識AFをオフにするとどうなるのか試してみたい。
思わぬところで実を結んだミサゴのプロジェクト。「チャンスは予期しないときに訪れる」という野鳥撮影の法則はここでも健在だった。