九州で移住先を探しているとき、北九州市が候補に挙がった。関門海峡を渡ると山口県の下関市だ。Googleマップであちこち見てみると悪くない。条件のよい格安物件があれば山口県でもいいかなと思った。
その選択肢はすぐに立ち消えになった。山口県にはクマがいる。林道を歩いて探鳥することが多い自分にとって、クマは最大の脅威だった。移住先はクマのいない九州に絞ろうと思った。
山中での野鳥撮影には危険が伴う。沖縄で野鳥写真を始めたとき、一番恐れたのはハブだった。実際に目にしたのは16年間で1度だけ。それもほんの一瞬だった。
数年前、沖縄北部のやんばる地域で野犬の出没がニュースになったことがある。探鳥でよく訪れるエリアだったので不安になった。やんばるの林道ではそれまでも野犬を何度か目撃していた。
春から夏にかけてはイノシシもよく見かけた。警戒心が強く、人の存在に気づくとすぐに山の中へ逃げていった。
それでも、ケモノじみたうなり声は恐かった。子連れのイノシシと近くで鉢合わせたら、逃げずにこちらへ向かってくるかもしれない。
イノシシや野犬から身を守るために催涙スプレーを購入した。ホルスターに入れてズボンのベルトに装着する。コイツがあればもう大丈夫。精神的なお守りを手に入れた気がした。
野犬であれイノシシであれ、催涙スプレーを噴射せずにすんだのは幸いだった。有効期限が切れた催涙スプレーは捨てずに取ってある。多少古くなっても鹿児島で使えるかもしれないと思ったからだ。
鹿児島の林道でもイノシシはたびたび目撃した。やはり人に気づくとすぐに逃げていく。これまでのところ、身の危険を感じたことはない。
アナグマやタヌキ、イタチもときどき見かける。いずれも沖縄にはいない動物なので最初は新鮮に映った。こちらに向かってくることはないので、写真を撮る心の余裕も生まれた。
タヌキ
イタチ
この3種のなかではイタチが好きだ。目がまんまるでカワイイ。イタチに似たマングースが沖縄にいるけれど、こちらはあまり可愛くない。ヤンバルクイナを捕食する「害獣」として駆除されている。
マングースはハブや野ネズミ対策のために沖縄に持ち込まれた外来種だ。人間の都合で放たれて悪者扱いされている。そう思うと気の毒な存在ではある。
最近、指宿市でサルへの注意を促す防災無線放送が流れた。群れからはぐれた野生のサルが市街地に出没しているらしい。
山中の林道でいつかサルと遭遇するかもしれない。人を見たサルはどんな態度をとるのか。イノシシのように逃げるのか。それとも自分たちの領域を侵す者と見なして威嚇してくるのか。
出会ったら嫌だなと思う反面、サルがどんな反応を示すのか見たい気もする。
平川動物公園のマントヒヒ。小猿は可愛い