片隅のユートピア

野鳥を愛するシングルシニアの雑記帳

コロナが明けて会う人は

先週、久しぶりに上京した。日本語教師としてインドへ行く友人の壮行会に出るのが目的だった。コロナもだいぶ落ち着いたので、しばらく会っていない友人たちとも再会したい。コロナで断ち切られた人との関係を結び直したいと思った。

・7/7(金)
夕方、新宿区のマンションを訪ねる。30数年前に編集のアルバイトで知り合った。当時はバイトと社員だった2人が夫妻として迎えてくれる。4年ぶりの再会。

沖縄のちんすこうに代わって鹿児島のマドレーヌを手渡す。部屋の様子は昔のままだけど、夫はベランダでタバコを吸うようになっていた。

酒がまわるにつれて、互いの近況報告から映画や写真、社会情勢へと話は広がっていく。これまで持参していた日本酒がなくても、ビールとワインだけで心地よく酔うことができた。

・7/8(土)
夕刻、池袋西口の居酒屋へ。インドへ行く友人の壮行会に出席する。大学のサークル仲間7人が集まった。

40年経っても会えば一瞬で学生時代にワープできる。これはもうマジックだ。この空間にはコロナで失われた3年間は存在しない。

髪が薄くなったり白くなったりと、皆が還暦過ぎのジジイになっていた。それでも話をすると昔のまま。誰一人変わっていなかった。

3時間の宴はあっという間に終わり、最後は記念撮影で締めくくる。店員さんにスマホやカメラを預けて撮ってもらった。誰かが校歌を歌い始める。歌声はすぐに大きくなった。

40年前、皆で肩を組んで校歌を歌ったことを思いだす。その只中にいながら、一体感に浸りきれない冷めた自分がいた。それは今でも変わらない。その点も含めてあの頃のままだった。

・7/9(日)
昼過ぎ、大学の友人2人と鶯谷の銭湯へ。インド旅行中に知り合った人と20数年ぶりに会う。最近、銭湯めぐりにハマっているとか。待ち合わせ場所にも銭湯を指定してきた。  

併設する食堂でビールを酌み交わす。70歳を過ぎて白髪は増えているけれど、話しぶりは昔と変わらない。30代の頃、その人に引っ越しを手伝ってもらったことがある。木造の古い風呂なしアパートだった。

自分だけ銭湯には入らなかった。夏の東京は蒸し風呂みたいなものだからと言い訳したけれど、足拭きマットで水虫をうつされるのが恐かったのだ。風呂なしアパート時代のほろ苦い記憶。

・7/10(月)
向ヶ丘遊園でランチする。酒を飲まない人なので、会うときはいつもランチかティータイムだ。駅前で待ち合わせていつものコメダ珈琲店へ。そのコメダが無くなっていた。

青天の霹靂だった。近くに珈琲館があったのでそこに入る。4年ぶりの再会とあって予期しないことがいろいろ起こる。

昔働いていた会社の同僚だった。同い年でともに一人暮らし。男女の違いはあっても、取り巻く状況が似通っているので話が弾む。

会社を辞めたあとも、一緒によく山に登った。いま一人で山に登っても味気ないのは、そのときの楽しい思い出が心に刻まれているせいなのかもしれない。

翌日、昼過ぎの便で羽田から鹿児島へ向かった。着陸に向けて機体が降下を始めたとき、美しい光景に目を奪われた。眼下の雲に光り輝く虹の輪が現れ、飛行機が黒い影となって浮かんでいる。

その一瞬の光彩のなかに、東京で再会した人たちとの出会いから今日に至るすべての時間が凝縮されているような気がした。

40年経ってもみんな変わらない