沖縄にいたとき、ジョウビタキは憧れの鳥だった。目にするのは良くて年に2、3回。まったく会えない年もあった。
沖縄で野鳥を撮り始めて間もない頃、川沿いの公園でメスのジョウビタキと出会った。そのときの写真がこれ。
2015年の正月だった、いま思うと、このジョウビタキとの出会いが野鳥写真にのめりこむキッカケとなった気がする。観る者の心にさまざまな感情を呼び起こす被写体としてのポテンシャルを野鳥に感じた。
翌年の1月にもジョウビタキは公園にやって来た。しかし、それ以降は姿を見せなかった。その川沿いの公園でジョウビタキと再会できたのは、7年後の2022年のことだった。
ルリビタキはさらに難しかった。沖縄で野鳥撮影をしていた8年間で見たのは4回だけ。
2017年の10月、やんばるの林道で出会ったオスのルリビタキはとりわけ印象に残っている。道端の茂みに隠れている鳥がルリビタキだとわかった途端、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
やんばるの森で青いルリビタキと会えるとは思っていなかった。チャンスは予期しないときに訪れる。探鳥はロマンだと改めて思った。
沖縄では目にする機会が限られていたヒタキ類。鹿児島に来ると状況は一変した。ジョウビタキとルリビタキは身近な鳥になった。
とくに多いのはジョウビタキ。住宅地から公園、森林、農耕地まであちこちで見かける。人をあまり恐れず、目立つ場所にとまるので、背景が抜けた開放的な写真が撮れる。沖縄での苦労は何だったのか。
11月下旬からルリビタキも見られるようになった。見かけるのはメス(またはオスの若鳥)が多い。フォトジェニックな青いオスを撮りたいのだが、チャンスが巡ってこない。昨シーズンもオスは満足のいく写真が撮れなかった。
でも、今年はヒタキの当たり年(?)。秋のエゾビタキを皮切りにジョウビタキやルリビタキも目にする機会が多い気がする。今年はイケそうと思っていたら、早くもチャンスが訪れた。昨日のことだ。
写真をじっくり眺めると、ルリビタキはきれいな鳥だと改めて思う。きれいな鳥はほかにも色々いるけれど、ルリビタキの瑠璃色は思わず見入ってしまう美しさだ。
ジョウビタキ、ルリビタキにつづく第三のヒタキがいる。ニシオジロビタキだ。昨シーズンは複数のフィールドで見かけた。その今季初のニシオジロビタキと先週出会った。
小さくて地味な鳥だけど、尾羽をピンと上げる仕草がかわいい。あの仕草を見るとやんばるの森に棲むアカヒゲを思い出す。もう会えないと思うと切なくなる。
そのアカヒゲロスを鹿児島のヒタキが束になって埋めてくれる。冬の三大ヒタキ祭り。そんなフレーズが頭の隅から転がり落ちてきた。