ニコンのD500とOMDSのOM-1。どちらも野鳥撮影で本領を発揮するカメラだ。AFの信頼性はD500が勝っているけれど、鳥認識AFやプロキャプチャーなど、OM-1は野鳥撮影に役立つ機能を備えている。
プロキャプチャーモードではシャッター半押しで撮影が開始され、シャッター全押しの瞬間から遡って最大70コマまで記録可能だ。このモードを使用すれば、野鳥が飛び立つ瞬間も捉えることができる。
当初からプロキャプチャーには関心を寄せていた。野鳥写真の新たな可能性を引き出すツールだと思った。
しかし、使うのが億劫でずっと放置していた。これでは宝の持ち腐れだ。今年2月に「プロキャプチャー強化月間」を立ち上げて本格的に取り組むことにした(プロキャプチャー始動)。
集中的に試してみた結果、課題がいくつか浮き彫りになった。ひとつは使用レンズによる制約。パナライカ100-400ではプロキャプチャーSH2の連写速度が25コマ/秒となり、50コマ/秒は使えない。
また、プロキャプチャーの撮影中は手ぶれ補正の効きが悪くなるため、レンズの手ぶれ補正は切ってボディのみ有効にする必要があった。
一方、撮影者は待つことを強いられる。鳥が飛ぶまでシャッター半押しで待ち続けるのは辛い。集中力が途切れてカメラを下げた瞬間に飛ばれることも・・・
歩留まりが悪くてストレスのたまる撮影体験。それが「強化月間」を通じた印象だった。見られる写真も何枚かは撮れたので、プロキャプチャーの実力を試す目的は果たせた。それ以降、積極的に使いたいという気持ちは湧いてこなかった。
この秋、そのプロキャプチャーの出番が再び回ってきた。きっかけはエゾビタキ。今年はエゾビタキの当たり年だ。毎日同じフィールドでエゾビタキを撮り続けるうちに、プロキャプチャーでも撮ってみようかという気になった。
ひとつの枝を拠点にして「フライングキャッチ」を繰り返すエゾビタキの習性もプロキャプチャーに向いていた。飛んでもすぐに戻ってくるので、シャッターチャンスには事欠かない。
撮影回数が多いため、歩留まりは悪くても見られる写真は増えていく。頭に描いたイメージを徐々にカタチにできるようになった。
躍動感がみなぎる飛び立ちの瞬間をとらえる。いわば野鳥におけるスポーツ写真。それがプロキャプチャーに抱いた最初のイメージだった。
この認識はエゾビタキの撮影を重ねるうちに変わっていった。「スポーツ」だけでなく「鳥景」もイケる。プロキャプチャーを使うことで、見る者の心に訴えかける鳥の情景を写し取ることができるかもしれないと思った。
エゾビタキが見られるのはおそらく今月いっぱいだろう。エゾビタキにかわるプロキャプチャーの対象について考えてみた。まず浮かんだのはヤマガラだ。公園の芝生をせわしなく飛び移るハクセキレイもいいかもしれない。
プロキャプチャーの第2章は予期しない形で訪れた。今回の撮影を通じて、プロキャプチャーが野鳥写真の新たな可能性を引き出すツールであることを実感した。イメージをカタチにする試行錯誤の日々はまだまだ続く。