沖縄に住んでいるとき、アカショウビンとサンコウチョウを夏鳥ツートップと呼んでいた。見る者の眼福となる美しい姿、一度聞いたら忘れられない独特の鳴き声。鹿児島で夏を迎えるにあたり、夏鳥ツートップと会えるかどうかが大きな関心事だった。
霧島山麓の野鳥の森なら高い確率で見られそうだ。とはいえ、自宅からは距離がある。南薩で会いたい。それも車で1時間以内の場所で・・・
身近な場所から探索を始めた。過去に訪れた探鳥フィールドのうち、アカショウビンやサンコウチョウがいそうな場所を選んで歩く。懐かしいあの鳴き声が聞こえてこないか耳を澄ましながら。
5月中旬。その場所を訪れたのは2回目だった。駐車場に車を停めると、耳に馴染んだホイホイホイという鳴き声が聞こえてくる。姿は拝めたものの、うっそうと茂る木立の奥にいて証拠写真しか撮れなかった。
この日の出会いを皮切りに、複数の場所でサンコウチョウを見ることができた。沖縄北部のやんばるの森ほどではないにしろ、鳴き声を耳にする確率はけっこう高い。被写体として十分に期待できそうだ。
アカショウビンとの出会いは突然だった。清流の河原でカワガラスが飛来するのを待っていると、アカショウビンが目の前に飛んできた。後ろ姿を呆然と見送る。アカショウビンと出会えた喜びがじわじわと込み上げてきた。
早朝、近くの山でアカショウビンの鳴き声を聞いたこともある。マイフィールドにアカショウビンがいる!と喜んだものの、鳴き声を聞いたのは1回だけだった。おそらく、数日で移動したのだろう。
先週は山中の林道を往復で15キロ歩いた。アカショウビンの鳴き声が聞けそうな林道として、Googleマップでアタリをつけた場所だった。
予想は的中。2カ所でアカショウビンの鳴き声を聞き、飛び去る後ろ姿も見ることができた。この林道歩きではサンコウチョウやオオルリの鳴き声も耳にした。
撮影の難度は高そうだけど、南薩でもアカショウビンを目撃したり、鳴き声を聞いたりすることは難しくない。現地を歩いてそう確信した。
木々が葉で覆われる今の時期、満足のいく野鳥写真を撮ることは難しい。それでも、林道を歩けば個性豊かな夏鳥たちの歌声に耳を傾けることはできる。
夏の林道の楽しみは鳥見ではなく鳥聴きにあるのかも。夏鳥ツートップの鳴き声を耳にしてそんなことを考えていた。