片隅のユートピア

野鳥を愛するシングルシニアの雑記帳

鳥が映える背景

沖縄に住んでいたときは、11月下旬になると東京の実家に帰省していた。目的のひとつは紅葉狩り探鳥。カラフルな紅葉をバックに野鳥を撮るのは楽しかった。

ヒヨドリシジュウカラも紅葉を絡めると見栄えのする写真になった。晩秋の東京はフォトジェニックでいいなぁと行くたびに思ったものだ。

カラフルな紅葉とは無縁の沖縄。1年中青々とした亜熱帯の森は季節感に乏しい。降雪がなく冬でも暖かいという恩恵はあるにしろ。

鹿児島に行けば紅葉を絡めて野鳥を撮れる。季節感を盛り込めば写真の訴求力も高まるに違いない。そう思って期待していた。

指宿は違っていた。沖縄のように冬でも青々としている。山の大半はスギの植林で覆われ、冬でも落葉しない照葉樹林が残りのスペースを占めていた。12月に入っても美しい紅葉はほとんど見られない。肩透かしを食らった気分だった。

スギの植林や照葉樹林にも赤や黄色に色づく木は混じっていた。そうした木々の色彩を野鳥の背景に取り込めば、季節の移ろいを表現できるかもしれない。

野山が舞台で相手は野鳥。思惑どおりに事は運ばない。色づいた葉を背景に入れたくても、派手に体を動かすと逃げられる。しゃがむ動作も良くない。ゆっくりやらないと飛ばれることが多い。

半歩移動するだけで背景は変わる。映える色彩を取り込み、目にうるさい枝や葉は除外する。先週、照葉樹の森で出会ったオスのルリビタキも、そんなふうに背景を意識して撮影した。

背景がほとんど緑一色だった夏と比べれば、カラフルになったとは思う。それでも、秋の紅葉にはストレートに結びつかない。さまざまな自然の要素が渾然一体となり、抽象絵画のようにも見える。これがルリビタキの森の実体なのかもしれない。

野鳥写真では背景が重要だと改めて思った。背景の選択によって写真の印象はガラリと変わる。

背景に気を配ることで、野鳥フォトグラファーの楽しみは倍増する。獲物を探すハンターだけでなく、捕らえた野鳥を表現するクリエイターにもなれるのだから。

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https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tokajar_h/20241208/20241208182842.jpgハンターの目で鳥を探し、クリエイターの頭で背景を選ぶ