窓の外はしのつく雨。雨に塗り込められた1週間だった。野鳥撮影にも行けない。探鳥を1週間休んだのは今年になって初めてのことだった。
脳内にも雨雲が垂れ込めていた。気分が晴れないというか、ちょっと鬱っぽいというか。長く居座る低気圧は精神にも暗い影を落としていた。
哀しい気分のときは哀しい曲を聴くのがよいらしい。気持ちと音楽が同調することで心が浄化されるとか。
ビル・エヴァンスのアルバム「You Must Believe in Spring」を聴きながら、今の気分と同調する写真はないか探してみた。思い浮かんだのはGRⅡで撮った森の風景。エフェクトモードの「レトロ」で撮った写真はどこかもの哀しい。
いずれも開聞岳の山麓で撮影した。写真を眺めながら、沖縄のやんばるの森みたいだと思った。亜熱帯を思わせる森の植生。ツタが絡まり、木々は天に向かって無秩序に伸びている。
航空写真で開聞岳を見ると、山の半分が海に囲まれて半島のようにみえる。どことなく南の島のように感じるのは、こうした地形のせいなのかもしれない。
英語のretrospectiveには「過去を振り返る」、「追想にふける」という意味がある。「レトロ」で撮った写真を眺めていたら、野鳥を探してやんばるの森を歩いた記憶がよみがえった。
固有種のヤンバルクイナやノグチゲラ、ホントウアカヒゲの鳴き声を聞きながら歩いていると、ここは特別な場所なのだと実感した。そのやんばるの森で探鳥できることに幸せを覚えた。
開聞山麓のやんばるライクな森にも野鳥はいるけれど、千両役者に欠けていた。ここは、南国情緒を味わいながら自然散策を楽しむ場所なのかもしれない。
天気予報によると、来週は晴れる日もあるらしい。早起きして「マダニの谷」へ向かおうと思った。先週撮影したオオルリにまた会えるかもしれない。
暑くなってもいいから、早く梅雨が明けてほしい。窓の外でまた雨脚が強くなるのを聞きながら、心からそう願った。
先週撮影したオオルリ