OM-1は不思議なカメラだ。野鳥撮影に1年半使ってそう思った。使う人間のリテラシーが低いだけなのかもしれないけれど。
スタートからコケてしまった。マルチセレクターによるAFターゲットの移動がスムーズにできない。右方向と下方向には動かせるのだが、左方向や上方向へはすんなり動いてくれない。
初期不良かもしれないと思った。購入店に連絡すると、確認したいので送ってほしいと言われた。返送後にメールが届く。複数のスタッフで検証したが、異常を再現、確認することはできなかったという。
イマイチ納得できないものの、自分に原因があるような気がしてきた。送り返されたOM-1をもう一度操作する。同じ現象が再現された。やっぱりダメじゃんと思いながらマルチセレクターを押し続けていると、なぜか左方向や上方向へも動かせるようになった。
押し方が悪かったらしい。マルチセレクター全体を傾けるように押すと移動できた。大騒ぎした自分が急に恥ずかしくなった。
鳥認識AFもどこかミステリアスだ。初使用での印象はよくなかった。被写体は海辺のホオジロ。認識はしてもピントは甘い。このときのAFターゲットはSingle。今思うとこれが原因だったのか。
鳥認識AFは信頼できないという印象が残り、それ以後はあまり使わなくなった。メジロやエナガのようにせわしなく動く鳥でも、SmallのAFターゲットで顔全体を狙えば捕捉することができた。
とはいえ、鳥認識AFに頼らざるを得ないときもある。たとえば、地面を歩く鳥をバリアングルモニターで低い位置から撮るシーン。飛翔するカツオドリやミサゴも鳥認識AFで撮ったほうが歩留まりは良かった。
最近は止まっている鳥にも鳥認識AFを使うようになった。4~5枚連写すればガチピンかそれに近いショットが1枚は撮れる。AFの歩留まりは鳥認識AFがオフのときと変わらない。もしくはそれ以上。ファインダー内で鳥の位置を変えたいときでも鳥認識AFなら簡単にできる。
最初は使い物にならないと思った鳥認識AF。いつの間にか野鳥撮影に欠かせないものになっていた。OM-1のファームウェアが1.7になり、機能的に熟成したのかもしれない。
それでも、被写体に応じてどのAFターゲットを使うのがベストなのか、今でも確信が持てなかったりする。確固とした地位を得たとはいえ、鳥認識AFは今なおミステリアスだ。
OM-1にはもうひとつ謎があった。撮影した野鳥の写真をPC画面で確認すると、写した覚えのないショットが数コマ混じっているのだ。たとえば、次のような写真。
タイムスタンプを見ると、野鳥撮影時の失敗ショットではないらしい。自分の意図しないときにカメラが勝手にシャッターを切っていた。空シャッターの回数は日によって違った。まったくないときもあれば、数十回に及ぶときもある。
カメラの動作不良を疑った。当初から発生していた現象なので、保証期間内に点検に出しておくべきだったと悔やんだ。
そんな折、YouTubeでOM SYSTEM PLAZAの動画を見ていたら、この現象の原因と解決策が示されていた。
犯人は背面のタッチパネルだった。タッチパネルの操作をオンにしていたため、パネルに触れたときにシャッターが切れていたらしい。空シャッターの画像を見返すと、いかにもそんな感じの写真だった。
動画の説明に従って「タッチパネル設定」を「Off」にする。以後、空シャッターの画像は出なくなった。
と思っていたら、昨日撮った写真に3枚混じっていた。自分では気づかぬうちにシャッターボタンに触れてしまったのだろうか。OM-1の謎は深まるばかりだ。
上5枚、ジョウビタキ
上2枚、ビンズイ