来週から12月だ。指宿でも朝晩は冷え込むようになった。暖冬だった昨年とは異なり、この冬の寒さは例年並みだという。
暖かかったはずの昨冬でさえ、あかぎれやしもやけに苦しめられた。歩いているときにふくらはぎが痛むようになったのは、寒さが厳しい大寒の頃だ。そのあと、腰痛で病院デビューも余儀なくされた。
今思うと、足の痛みも腰痛も寒さで血流が悪くなったせいだろう。寒さは体調不良の元凶だ。その寒さに起因する諸々の症状と無縁でいられた沖縄の冬を想った。
ビットコインが安かったときにたんまり買っておけば良かったと思う。それなら今頃は「億り人」だ。沖縄で一戸建てを買って冬でもヌクヌクと過ごせていただろう。ビンボーが憎い。
たとえ賃貸アパートでも沖縄に住み続けていたほうが良かったのでは? と思うこともある。猛暑に見舞われたこの夏は、沖縄へ避暑に行きたくなった。鹿児島と比べて夏は2~3度低く、冬は7~9度高い。沖縄の気候は老人に優しい。
気候だけではない。野鳥を求めて山野を歩くバーダーにとって、沖縄の自然は快適だった。メマトイに付きまとわれることもなく、危険なオオスズメバチもいない。スギ花粉が飛ばないから新緑の森をマスクなしで散策できる。洗濯物を干す前に桜島の降灰をチェックする必要もない。
沖縄の気候と自然はすばらしい。ブヨやマダニに喰われたり、台風や大雨に襲われたりはしたけれど、それは鹿児島も変わらない。
その一方でこうも思う。沖縄の気候と自然がすばらしいと思えるのは沖縄を離れたからだと。鹿児島と住み比べたことでその優位性が浮き彫りになったのだ。
沖縄でアパート暮らしを続けていても、暖かい冬に感謝の気持ちが湧くことはなかっただろう。年金の月額が家賃であらかた消えてしまうことのやるせなさや、集合住宅に付きものの生活音へのいらだちが頭の中を占めていたにちがいない。
鹿児島にきて来月で丸2年になる。自宅の価格は沖縄での家賃3年分。あと1年住めば元は取れたことになる。古い木造家屋ならではの問題はいろいろあるけれど、集合住宅の生活音から開放された恩恵は大きい。
冬の気温は沖縄より低いけれど、東京と比べると4度ほど高い。気温だけでは語れない沖縄の冬の姿がまぶたに浮かんだ。冬の沖縄は日照時間が少なくて北風が強いのだ。
トータルに考えれば、沖縄から鹿児島へ老後移住して正解だったと思う。終の住処を手に入れたという安心感はやはり大きい。
沖縄では見る機会がなかった野鳥とも出会えるようになった。鹿児島の冬は野鳥撮影のベストシーズン。冬鳥の顔ぶれは多彩だ。
昨日は池田湖の近くで今季初のクロジを撮影した。冬の鹿児島は寒いけれど熱い。