車のタイヤに目が行った。明らかにたわんでいる。エアゲージで空気圧を測定した。100kpaと極端に低い。ほかの3本に異常はなく、左の前輪だけがそうなっていた。
嫌な予感がした。2年ほど前、縁石に乗り上げたことがあった。50キロほどのスピードで走っていたので衝撃も強かった。タイヤに異常は見られず、一度点検を受けなくてはと思いながらそれっきりになっていた。そのときのダメージが今になって表面化したのかもしれない。
困ったときのAI頼み。スローパンクかバルブ不良の可能性が高い。それがCopilotの答えだった。縁石に当てた記憶があるか? と聞かれてドキッとする。やはりアレが原因か。
タイヤに異物が刺さっていないか? とも聞かれたので、念のために調べてみる。なんと、プラスのネジが刺さっていた。犯人はコイツらしい。縁石が原因でなくてホッとしていた。タイヤを交換せずに修理できるかもしれない。
淡い期待は打ち砕かれた。側面に近い外側ぎりぎりにネジは刺さっていた。この場所は構造的に弱く、タイヤ交換が必要になる可能性が高いという。
AIの助言に従って、前輪の2本を交換することにした。購入して3年強。タイヤの残り溝はだいぶ浅くなっている。乗り心地が良くて気に入っていたのだが。
タイヤの在庫があることを電話で確認し、タイヤショップへ向かった。ネジの刺さったタイヤには、前日にエアコンプレッサーで空気を入れてあった。翌朝、たわみは見られなかった。空気はじわじわと抜けていったのだろう。
タイヤの交換は30分もかからなかった。スローパンクの問題が片付いてひと安心。のはずだったが、心は晴れない。後輪の2本もだいぶ減っているから4本まとめて交換するように店員に言われたことが頭に残っていた。
営業トークもあるのだろう。4本交換だと5万近くかかる。出費は最小限に抑えたい。そう考えて、予定どおり2本交換で済ませたのだが。
翌日、五円玉を使って後輪タイヤの残り溝を測ってみた。外側の溝と内側の溝で減り具合がかなり違う。いわゆる片減りの状態だった。タイヤの残り溝はもっとも浅い部分で判断するらしい。後輪2本も限界に近づいているのは間違いなさそうだった。
片減りがあるとタイヤの寿命も早まるとか。それが起きる原因のひとつにアライメントのズレがあるという。縁石に乗り上げた苦い記憶がよみがえった。
速度50キロで縁石に乗り上げればアライメントがズレる可能性は十分にある。それがCopilotの答えだった。そりゃそうだろうと思う。タイヤが古ければパンクしていたかもしれない。それほど強い衝撃だった。
今回もCopilotが行動指針を示してくれた。後輪のタイヤ2本を交換するタイミングでアライメントを測定し、ズレがあれば調整する。ズレを放置したら、タイヤを交換しても長持ちしない。結局、それが最適解なのだろう。
スローパンクのタイヤ交換を終えた車で野鳥撮影に出かけた。2年ぶりに訪れるフィールドだった。近くに水路があるせいか、思いのほか鳥影は濃い。
ウグイスが近くで鳴いている。ホーホケキョと柔らかく響く鳴き声は、聞き惚れてしまうほど美しかった。目を向けると、近くの木で活発に動きまわっている。
ウグイスの本当の姿を知っている人間はどれほどいるのだろう。せわしなく動く姿をファインダーで追いながら、そんなことを考えていた。

