4月のある晴れた日、新緑の美しい森へ出かけた。萌える若葉が風で揺れている。夏鳥との出会いを求めて、緑したたる道を歩いていた。
いろいろな鳥の鳴き声が聞こえてくる。これはシロハラ、あれはシジュウカラと頭のなかで挙げていく。道路脇の茂みでも鳥が鳴いていた。その声を聞いて足が釘付けになった。
初めて聞く鳴き声だった。正確には生で聞くのは初めて。YouTubeでは何度も耳にしていた。出会いを夢見ていた野鳥のさえずりだった。
茂みの隙間から落ち葉の地面に目を凝らす。メスのコマドリだ。鳴き声から察しはついていた。
レンズを向けてファインダーでとらえる。心臓の鼓動がいっきに速くなった。メスのアカヒゲがいる。手が震えないようにカメラを顔に強く押し当てた。シャッターを切りながら「アカヒゲだ! アカヒゲだ!」と心のなかで叫んでいた。
尾羽をピョンと上げるしぐさもアカヒゲのそれ
視界から消えたメスと入れ替わるように、今度はオスのコマドリが姿を現した。出会いを待ち焦がれていた憧れの鳥。
初見初撮りのコマドリ
コマドリとアカヒゲは、オス同士はあまり似ていない。体の色で比べると、アカヒゲのオスが赤+黒であるのに対し、コマドリのオスはオレンジ色+灰色。見た目の印象はだいぶ違う。共通しているのは、どちらも美しい鳥で写真映えがすること。
コマドリのカップルが居なくなったあとも、その場所に留まっていた。憧れの鳥とついに出会えた喜びの余韻に浸っていたかった。待っていればまた出てくるかもしれない。そんな期待もあったのだが、願いは叶わなかった。
越冬しているコマドリと出会うこと。それがこの冬のミッションだった。実際に、Googleマップでアタリをつけた沢沿いの林道を歩いてみたりもした。
結果はすべて空振り。コマドリは簡単には見つからない。今年はもうダメだろうと諦めていた。4月の探鳥リストの候補にもコマドリの名はなかった。
チャンスは予期しないときに訪れる。それが野鳥撮影の法則であることをこれまでの体験から学んでいた。今回もまたしかり。
この日出会ったコマドリは越冬した個体なのか、それとも渡りの途中なのか。そんな疑問が湧いてきた。時期的にどちらの可能性もありそう。越冬した個体ならミッション達成でチト嬉しいのだが。



