年寄りの体は醜い。シャワーのあと、姿見に映る自分のハダカを見るたびにそう思う。太っているわけではない。痩せ気味だけど、ガリガリというほどでもない。体重は高校生の頃と変わらない。
違うのは肌の張りだ。乾燥して潤いがない。たるんでシワが寄っている箇所もある。
醜い体は愛せない。高齢者のセルフネグレクトは、そうした思いが引き金になるのかもしれない。若いときは、美しいとは言わないまでも肌に張りがあった。弾力性のある筋肉はさわっていて心地よかった。
それなのに今は・・・と太ももを両手で掴んでみる。意外にも確かな筋肉の感触が伝わってきた。野鳥撮影で歩くことが多かったせいか、足の筋肉は衰えていないようだ。
肌は劣化しても筋肉はまだ大丈夫。そう思うとすこし気分が晴れた。3月に入って暖かくなったこともあり、しばらくサボっていたスロートレーニング(スロトレ)を再開しようという気になった。
スロトレは沖縄にいた頃に始めた。15年以上続けていることになるが、毎日やっているわけではない。とくに鹿児島に来てからは、寒い冬の間はサボるようになっていた。
ゆっくりとした動作でトレーニングすることで、軽い負荷でも効果的に筋肉を鍛えられるというのがスロトレの謳い文句だ。とはいえ、今やっている軽いトレーニングでは、筋肉を現状維持することしかできないだろう。
スロトレに併せて朝のウォーキングも再開した。雨で外出できないときはステップ台の昇降運動を30分間やる。そのあとシャワーを浴びることで、すっきりした気分で1日を始められるようになった。
スロトレでは鍛えた筋肉を毎回ストレッチする。それとは別に血管をほぐすストレッチも新たに取り入れることにした。太ももやふくらはぎなど、太い血管が通っている箇所を伸ばせば、硬くなった血管も柔らかくなるという。
"血管ストレッチ"でGoogle検索すると、該当するストレッチがいくつも表示された。足と腰を中心に7種類のストレッチを選んだ。
腰痛防止のストレッチをしたら腰痛になったことがある。今の体はその頃よりもっと硬い。無理は禁物と自分に言い聞かせた。
力を入れすぎないように気をつけながら、未知の動作を体に命じる。初めて取り組むストレッチなのでイマイチ要領がつかめない。筋肉を伸ばしつつ、体が発する声に耳をすませた。
そうやって、ひとつひとつ動きを確かめながら新しいストレッチをやり終えた。体が軽くなった気がする。爽快な気分だった。
老いた体を愛せるかどうかは、その体とどんな関係を確立するかにかかっている。良好な関係を築きたければ体と対話を重ねていくしかない。血管ストレッチは、老いた体と対話する有効な手段になると思った。
