片隅のユートピア

野鳥を愛するシングルシニアの雑記帳

マダニの谷で待つ鳥は

人生は山ありダニあり。不快な虫との闘いは避けられない。とはいえ、一度に3匹のマダニに襲われたショックはあまりに大きかった。

野山の探鳥フィールドでは、マダニに効果のある虫よけスプレーを足首に吹きつける。探鳥から戻ると服を全部脱いで姿見の前に立ち、マダニが付いていないか念入りにチェックする。

ほくろを見てマダニかもしれないと思う。指で触ってスルッと過ぎればよし、ひっかかるときは要チェックだ。マダニ恐怖症――そう言えるのかもしれない。

探鳥の前後に十分な対策を施していても、マダニに襲われた谷を再訪する気にはなれなかった。また噛まれるかもしれない。そう思うと恐怖で気持ちが萎えてしまう。

恐怖心を払いのけたのは、去年そこで目にした青い鳥だった。渓流の水辺に立っていると、近くの岩にオオルリが飛んできた。渓流の宝石と呼びたくなるくらい綺麗だった。

撮り損ねたあの美しいオオルリを撮影したい。その想いに突き動かされてマダニの谷へ向かった。2日前のことだ。

オオルリを見かけた川辺には行かなかった。水辺に出るには草をかき分けて進まなければならない。マダニのリスクは極力避けたかった。

かわりに川沿いの車道を歩く。植林されたスギのはるか上でカケスが鳴いていた。さらに進むと新緑の広葉樹林が渓谷を取りまく場所にでる。

オオルリの鳴き声が聞こえてきた。カケスのあとに聞くオオルリの美声。なんとも耳に心地よい。鳴き声の主を突き止めるとメスだった。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tokajar_h/20240519/20240519214819.jpg

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tokajar_h/20240519/20240519214931.jpg

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tokajar_h/20240519/20240519214857.jpg

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tokajar_h/20240519/20240519214940.jpg

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tokajar_h/20240519/20240519214936.jpg

メスの鳴き声に呼応するようにオスも姿を現した。ついに真打ち登場。胸の高鳴りを覚えながら、憧れの青い鳥にレンズを向ける。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tokajar_h/20240815/20240815122335.jpg

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tokajar_h/20240815/20240815122343.jpg

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tokajar_h/20240815/20240815122352.jpg

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tokajar_h/20240815/20240815122400.jpgOM SYSTEM OM-1 + LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm

昨年、オオルリを見かけた川辺では、忘れられない出会いがもうひとつあった。アカショウビンだ。

今回、アカショウビンの鳴き声は聞けなかった。去年目撃しているので会える可能性はある。渓流とそれを取りまく広葉樹林オオルリだけでなくアカショウビンにとってもふさわしい環境にちがいない。

マダニは恐いけれど、この谷の吸引力には抗えない。目をつむると、キョロロローというあの独特の鳴き声が聞こえるような気がした。